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袴は男装の小道具じゃない。銀座の呉服店で本気で学んできた記録

きっかけは、知人から譲り受けた一枚の袴。

 

箪笥ごと譲り受けたのだけど、あとから出てきた証紙の山…

神経衰弱のごとく「この柄どこかでみたぞ?」

と照合したのが何やらパリっと気持ちよく綺麗な袴!

 

何気なく調べてみたら……

人間国宝・甲田綏郎(こうだよしお)さんの精好仙台平!
しかも一度も着られないまま、捨てられる寸前だったもの。

・・・いや、知らんぞという読者さんも多いよね?

スイマセン私も知らない…誰?
何?セイゴウセンダイヒラ?

  

 

着付けの先生にその話をしたら、即答。

「息子さんいるんだから大切に保管しておきなさい」

 

私が着る、という選択肢は最初から存在しない。

当たり前っちゃ当たり前!

聞く前から言語道断なのは私でも解かる。

 

でも、そこからモヤモヤ。

 

ならばちゃんと学ぼう。

袴とは何か。

格、種類、着方。

 

理解したうえで、どうするか決めよう。

 

DM画面なので写真など一部ボカしてます
DM画面なので写真など一部ボカしてます

 

ちょうどその頃、銀座の呉服店から袴講座のDM。

男性向けだし、販売目的なのも承知の上。

女性でも参加できるか恐る恐る問い合わせたら、快諾。

 

即!参加を申込んだ。

 

 

SuchBarではフォーマルパーティも控えている。

訪問着で行くつもりだった。

でも、こんな袴があるなら……着る? 着ない? 悩む。

 

 

しかも最近、糸が朽ちかけた曾祖父の五つ紋羽織を悉皆に出したばかり。

息子が着るかもしれない、という希望付きで。

とはいえ、息子が着物に目覚める保証なんてない。

目覚めたとしても、紋付袴を着る機会なんて、そうそうない。

 

だったら、私が着たい。

 

譲り受けた袴に合わせられる黒羽二重の五つ紋付もある。

長着と羽織、しかも二組。

知人とその先代のもの。

つまり自分の家紋ではない。

 

私は羽織しか持っていないから着るなら長着は違う家紋を重ねることになる。

これもきっと非常識なのは察しが付く!

家紋にも先祖や両親など家系を重んじる意味があることを調べたからだ。

 

ただ知人というのは父の後輩で、私を生まれた頃から知ってる隣のオジサン。

私の曾祖父は地元に根付いた人だし、ご近所の先祖同士、ケンカしないでしょ。

そう思って、着ると決めた。

 

ただし条件付き。

コスプレおふざけ感覚は絶対にイヤ。

面白おかしく男装したいのではなく、袴に敬意をもって着たい!

作り手さんの想いを背負って着られる日を待ち続けて眠っていた袴。

 

だから学ぶ。

 

 

講座では、袴の基礎を徹底的に。

形・素材・結び方。

それぞれに礼装・準礼装・普段用があり、

全部で9分類になった資料が配布された。 

 

参加者6名、うち女性は2人。

おぉ、私の他にもいたんだ(ホっ)

 

 

 

私の袴は、礼装の中でも最上位の仙台平。

 

「平」とは平袴のこと。

仙台平はカジュアルにはならない。

 

無地袴、御召、訪問袴は準礼装〜普段。

 

紬無地袴はアンサンブルなら準礼装だけど基本普段着。

 

 

袴の種類も奥深い。

本袴(馬乗り・行灯)だけじゃなかった!

 

小袴、野袴、平成袴、軽衫(かるさん)、たっつけ。

それぞれどんな形か、写真や解説で丁寧に教えていただいた。

 

結び方にも格があり、

礼装は十文字結び

準礼装は一文字結び

普段はこま結び、結び切りともいう。

 

解説を聞きながら、実際の反物にも触らせてもらう。

出てきたのは、精好仙台平。

 

お店の人が添え書きのパンフレットをみせながら

皇室御用達とか人間国宝とかいうタダモノではない解説が…!

 

生地の密集具合、艶、重み。

値札をみたら140万円台のものと160万円台のもの。

 

私の仙台平は多分もう少しリーズナブルで、

あらかじめチェックしていたもとじさんの商品ページでは約50万円。

 

とはいえ、これを百貨店の外商で仕立てたというと……考えるのはやめよう。

 

 

座学のあとは、男性陣が実際に着装。

私は自粛。

その代わり、手順をガン見してメモ。

学び多し。

 

正直、昨日今日で極めたわけじゃない。

 

でも、知らずに着ちゃいけない世界だということだけは、ハッキリ分かった。

 

 

 

 

さて。

いくら高級ホテルのパーティでも、私が着ていいシロモノなのか。

正直、まだ悩んでる。

 

でも着る発想がなければ、調べることもなくこの袴はゴミになっていた。

 

調べて知った「人間国宝・甲田綏郎作」

ひょえ~~😱 である。

 

非常識? 冒涜?

 

そう迷ったとき、ふと思い出した。

最強に非常識で最強に愛のある人をアンバサダーに呼んでいたじゃないか!

振袖めいちゃん✨ 


軽率に振袖を着る!をコンセプトに、

振袖でいろいろなところにおでかけをしている女装子さん。

何度かお会いしてるんだけど普通に

「え~俺ただのオジサンだよ?あ、俺って言っちゃった」

と、普通に男性として好きなものを着用している、

その姿が幸せそうで見てる方も楽しくなる。

化粧も上手で周囲に不快感を抱かせない、

むしろホッコリ幸せを振りまいている存在。

 

そうだ、着よう。

日頃から幸せをもらっているめいちゃんのおかげで勇気がわいた。

「そう!着物は着てあげるのが一番!」だって!

 

彼女(彼?)がいなければ、何年も眠ったまま消えていた精好仙台平。

知ってもらって、触れてもらって、語られて。

形はどうあれ、着て楽しまれるほうが、袴も幸せなんじゃないか。

 

やっぱり私は思う。

着物は、しまって守るだけじゃない。

学んで、敬って、楽しんでこそ!

 

 

 

袴講座の話に戻るけど、

受講者でもうひとり仙台平を持ってる人がいた。

その日は洋服で参加していた60代くらいの男性、

趣味でお茶をやっているそうで

12年着ているけど一切ヘタらない、いまだにパリっとしているという。

 

これは心強い!

私が一度くらい着た程度、非常識に晒されてもキミならビクともしないんだね。

 

もちろん、

女性が男性の礼装を着ることに違和感を覚える人がいるのも、よく分かる。

礼装とは、本来「型」を守るもの。

秩序や歴史を、静かに受け継ぐための約束事。

 

だからこれは誰にでも勧めたい話ではないし、

「自由だから何でもアリ」と言いたいわけでもない。

 

ただ一つだけ言えるのは、

何も知らずに軽く着るのと、

学んで、敬って、

覚悟を持って袖を通すのとでは、

同じ非常識でも質がまったく違うということ。

 

そしてこの袴は、

その覚悟を持つ人間かどうかを、ちゃんと選ぶ一枚だった。

 

 

 

結果として私は、

二週間後の帝国ホテルの忘年会で、この袴を着ることになる。

誰かを挑発するためでも、

目立つためでもなく、

この袴と、これまで出会ってきた人たちへの礼として。

 

参加者さんには一部、

私の男装で不快な思いされる方もいるかもしれないと思い

袴に出会った経緯と、おふざけではない胸の内を事前に説明したら

「丁寧にありがとう」と理解してくれた。

 

 

「あ、そういう形もあるのか」

もし私をみた人がそう思ってくれたなら、それで充分。

 

 

袴は今日もパリッと静かに、何事もなかった顔でそこにある。

 

学びをくれた呉服屋さんにも

近いうちお礼に立ち寄ってみよう

 

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