私は何も持っていなかった
昔、テレビ局で映像制作をしていた。
華やかに聞こえるかもしれないけれど、
私はただのスタッフだった。
特別な技術があるわけでもない。
ジャーナリズムを変えてやろうなんて熱意もない。
出版業界にもいた。
でも雑誌ライター止まり。
本を出したわけでもないし、賞を取ったわけでもない。
キャバ嬢もやった。
おかげさまでそこそこ稼げた。
でも店を持ったわけじゃない。
周りを見れば、すごい人ばかりだった。
有名プロデューサー。
方々で活躍中のディレクター。
裏方なのにどこかで名前を見るような人たち。
みんな何者かに見えた。
それに比べて私は、
「で、私は何なんだろう」と思っていた。
トマトちゃんに言われたこと
そんな頃だった。
『ウゴウゴルーガ復刻』の制作チームにいたことがある。
私は昔からトマトちゃんが大好きだった。
ある時、そのトマトちゃんの中の人に言われた。
「人生にムダなことなんて何ひとつないよ」
その時は正直、理解できなかった。
だって現実、私は何にもなれていなかったから。
後になって分かったこと
それから私は医療業界へ移った。
すると不思議なことが起きた。
キャバ嬢時代の接客経験が役に立つ。
テレビ業界で身についた段取り力も役に立つ。
マスコミ対応もできる。
文章も書ける。
映像も編集できる。
ホームページも作れる。
イベントも回せる。
気付けば医師から、「何でもできるんですね」と言われるようになっていた。
その時だった。
ああ、トマトちゃんの言っていたことはこれか。
全部つながった。
やっと理解できた。
人生は伏線回収が遅い
若い頃の私は、
何か一つの肩書きを
なるべく早く持たなければいけないとあせっていた。
周りが凄すぎたから。
人生って伏線回収が遅い。
遅すぎる。
だから途中で「こんなの意味ない」と思ってしまう。
でも案外そうでもない。
今やっていることが何になるのかなんて、その時には分からない。
分からないまま進むしかない。
そして後になって「あれがここで使われるのか」と笑う日が来る。
だからもし今、
何者にもなれていない気がする人がいたら。
・・・たぶん大丈夫。
まだ伏線回収の途中なだけだ。
人生は連載漫画みたいなもので、
最終回まで読まないと意味が分からないから。
もし今、
「自分には何もない」と思っている人がいたら。
たぶん大丈夫。
私もそう思っていたから。
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